代襲相続と数次相続の違いを解説!相続人も変わります
ポイントは「亡くなる順番」
亡くなった方(被相続人)の相続手続きをする際に、その相続人が被相続人より先に死亡していたケースと、後に死亡したケースでは最終的な相続人が変わってきます。
先に死亡していたケースによって発生するのが代襲相続、後に死亡したケースによって発生するのが数次相続です。
今回のコラムでは混同しやすい「代襲相続」と「数次相続」の違いについて図表を挙げて解説します。
代襲相続について
代襲相続(だいしゅうそうぞく)とは?
相続人となるべき子供や兄弟姉妹が被相続人の相続開始以前に「死亡」、または相続人の「欠格事由に該当」していたり「排除」されたことによって相続する権利(相続権)を失っていたときに、その者の子供や孫(直系卑属)が代わりにその者が持っていた相続権を受け継ぐことを「代襲相続」と言います。
代襲相続の具体例
次の図を例にして死亡によって発生した代襲相続をご説明します。なお、数字は亡くなった順番を表しています。
被相続人Bの相続開始以前に子供であるAが亡くなっていた場合には、AはBの相続権がありません。この場合にはAの子供2人がAの相続権を受け継ぐことになります。
イメージとしてはBの遺産がAをスルーして直接子供2人に降りてくる感じです。
したがって、このケースでBの相続人はBから見て配偶者と孫2人になります。後ほどご説明する数次相続と違ってAの配偶者は相続人にはならないことに注意が必要です。
Bの遺産分割協議を行うときの当事者は?
前項でご説明したとおり本ケースにおけるBの相続人は、Bの配偶者と孫2人です。
したがってBの遺産分割協議を行うときの当事者はその3人ということになります。
代襲相続の発生原因は3つ
前項では分かりやすくするために死亡を例にしましたが、代襲相続の発生原因は正確には3つあります。
(1)被相続人の相続開始以前(同時を含む)に死亡
(2)相続欠格
(3)排除
以下、この3つについて簡単にご説明します。
(1)被相続人の相続開始以前(同時を含む)に死亡
文字通り被相続人が亡くなる以前に相続人となるべき者が死亡していた場合です。「以前」ですので、例えば祖父とその子供である父が「同時に死亡」した場合も含みます。
(2)相続欠格
相続欠格とは、被相続人に対し一定の重大な非行をした相続人の相続権を法律上当然に剝奪する民事上の制裁です。相続人の意思に関わらず当然に剥奪されます。
したがって、相続権が剥奪された相続人は相続人ではなくなり、その結果として相続欠格者の直系卑属が相続人となります。
なお相続欠格の発生事由は5つあります。参考までに民法の条文を挙げますが、ものすごく大まかに言うと被相続人に対して非道な行為をすることです。
(相続人の欠格事由) 第八百九十一条 次に掲げる者は、相続人となることができない。 一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者 二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。 三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者 四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者 五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者 |
(3)排除
排除とは、遺留分を有する推定相続人が被相続人に対して虐待や侮辱、その他の著しい非行をした時に、被相続人の意思によって家庭裁判所に排除の請求をすることにより、その推定相続人の相続権等を失わせることです。
(2)の相続欠格と同じように相続権を剥奪する趣旨ですが、相続欠格は法律上当然に剝奪されるのに対し、排除は被相続人の意思によって剥奪する点が大きな違いです。
この場合の相続人も(2)と同様に排除された者の直系卑属が相続人になります。
こちらも参考までに民法の条文を挙げます。
(推定相続人の廃除) 第八百九十二条 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。 |
なお、遺留分についてはこちらのQ&Aをご参照ください。
数次相続について
数次相続(すうじそうぞく)とは?
被相続人の相続が開始した後、遺産分割協議や相続登記といった相続手続きを行わないうちに相続人の1人が死亡してしまい、その相続人の相続も開始されてしまうことを「数次相続」と言います。
数次相続の具体例
次の図を例にして数次相続をご説明します。なお、数字は亡くなった順番を表しています。
被相続人Bが亡くなった後、Bの相続手続きを行わないうちに相続人であるAが亡くなりました。
まずBの相続開始によってBの配偶者とAが相続人になります。代襲相続とは違いAはBの死亡時には生きていますので、この時点でAはBの相続権を手に入れたことになります。
その後にBの相続人としての相続権を持ったままAが亡くなり、それをAの相続人であるAの配偶者と子供2人が相続することになります。
イメージとしては上から下に順番どおりに遺産が降りてくる感じです。
先ほどの代襲相続とは違いAの配偶者は相続人になります。こちらの方が分かりやすい相続ですね。
Bの遺産分割協議を行うときの当事者は?
本ケースにおけるBの相続人は、Bの配偶者とAです。
ただしAはすでに死亡しているため当事者となることができません。
したがってBの遺産分割協議を行うときの当事者は、Bの配偶者、Aの立場を相続したAの配偶者と子2人となります。
先ほどの代襲相続のケースと当事者が違いますので比較してみてください。
遺産分割協議を行うときの注意点
代襲相続のケースと数次相続のケースにおけるBの遺産分割協議の当事者をご説明しましたが、もし当事者に未成年者がいる場合は注意が必要です。
未成年者は単独で遺産分割協議を行うことができません。
したがって親権者が代理をする必要がありますが、その場合は親権者と未成年の子の利益相反行為が問題となってきます。
それについては前回のコラムで詳しく解説していますのでご参照ください。
前回のコラム
親権者と未成年の子の利益相反行為【ケース別に解説】
おわりに
今回のコラムでは代襲相続と数次相続の違い、最終的な相続人が変わることによって遺産分割協議の当事者にも影響があることを解説しました。
代襲相続や数次相続といえども本ケースのように比較的単純な事例であれば、ご自身で戸籍集めをして相続手続きを行うことも十分に可能だと思います。
もし難しいと感じた方は当事務所までお気軽にお問い合わせください。
本ケースはもちろんのこと、兄弟姉妹が当事者となるケースや、何世代も前から相続登記をしていないケースなど、相続手続きのプロである司法書士がスピーディーに解決いたします。